「天城一の密室犯罪学教程」 天城一 (日本評論社)

1947年初出の短編「不思議の国の犯罪」にてデビューした”幻の探偵作家”天城一の初作品集。

「密室犯罪学教程」は実践編10作品を読み終えた後、理論編で密室トリックの分類があり、
前出の短編がこれらのトリックの作例であったと解説するという構成。なかなか興味深く読めました。
密室ものだなんて全然意識しないで読んでたものもありました。トリックをつきつめるとそうなのかなーと納得はするけども。「密室はメルヘンである」という言は面白い。確かにそうかも。
未読の古典ミステリのネタ割れがあるのにちょっと苦笑いですが、密室ものが好きな人なら楽しめるんじゃないかと思います。ライトミステリで密室ものを書こうという作家さんに参考テキストにしてもらいたいくらい。
それと、天城一氏の密室トリック分類でいうと「戦う少女と残酷な少年」は一体何に当てはまるのかがちょっと知りたい。抜け穴なのか、あれこそ純粋密室なのか…w

摩耶ものと呼ばれる短編10編。まったく理解不能な「盗まれた手紙」を除けば結構面白い。
ベストはやっぱり「高天原の犯罪」。ネタの見事さもさることながら、堅物の島崎警部が「末世だ! 神が殺された!」と叫んだり、
地の描写がいちいち大仰なケレン味に満ちていて、読んでてめちゃくちゃ面白い。
作者はコメディ調にしてるつもりはないのかもしれないけど、あちらこちらで笑いながら読んでました。
あとは「ポツダム犯罪」がカーっぽいトリックで好きかも。

こういう作品を発表してた作家さんの著作が(商業出版で)今まで一度も出版されたことがなかったというのも、勿体無い話だなあと思ったり。
好事家の人たちはめちゃめちゃ嬉しいんでしょうねえ。