「幻影のペルセポネ」 黒田研二 (文藝春秋)

 「バーチャル・プラネット」は惑星ペルセポネという仮想空間で好き勝手に過ごすことができるオンラインゲーム。
そこで発生したキャラの殺害事件と呼応するかのように、現実世界でも殺人事件が起きてしまう。
虚実入り乱れる事件の様相。主人公を襲う悪意の正体は……。

 黒田研二作品の最大の魅力である複雑なプロットワークが堪能できる作品でありました。
登場キャラそれぞれの思惑と行動が錯綜しまくってものすごく歪な事態を引き起こしており、
真相解明シーンでは驚き感心半分、なんでそんなややこしいことをしなきゃいけないんだーと呆れるのが半分。
電脳空間(ペルセポネ)での密室殺人なんか手順が煩雑過ぎて笑ってしまうんだけど、一点してやられた!と感じてしまう部分もあり。上手いなあ。
ミステリとしては期待値通りの面白さ。

 主人公の痛々しさは寧ろ微笑ましいという感じすらあって、わりと好ましかったのだけど、
主人公がヒロインの”メグ”に惹かれていく展開に説得力が無さ過ぎなのはげんなり。
全然浮かばれないこがいるのも納得いかない。あの展開なら殺しちゃう必要まではないじゃないかー。
そのへんが引っ掛かって、ラストもやや白け気味に読んでました。
デビュー直後の作品とかと比べると格段に読みやすくなってるし、黒田さん小説上手くなったなあとしみじみ思えるんだけど、
色恋沙汰の描き方が一向に面白くなってこないのはホントどうにかならんものか。
意識してラブコメでも書いて修練してくださいよ。非リアル路線でもいいなら、貴志祐介みたいにエロゲーで萌えコードを研きゅ(略)。