「逆さに咲いた薔薇」 氷川透 (カッパノベルス)

殺害した女性の左足の小指を切断し、赤い靴下を履かせるという猟奇連続殺人が発生。
しかも、事件と非常に似通った内容の小説が、事件発生以前に出版されていた。
事件に挑む新米女性刑事。そして、祐天寺美帆の指摘する真相は如何に。

随分すっきりしてて、さらっと読めるミステリになってるなあという印象。
本格ミステリとしてはまあまあの出来といったところ。反転の構図にはふむふむと頷けるものの、意外性のある真相になってないのが弱いかな。
前作の『各務原氏の逆説』といい、氷川透(作中探偵)シリーズとは意識的に違う雰囲気を出そうとしてるんですかねえ。

主人公の女性刑事は氷川作品にしては随分爽やかなキャラクタになってて感情移入しやすいし、
他の刑事たちのキャラも嫌味がなくて良い感じ。
そのぶん、探偵役の*1
のエキセントリックなところが作品中で異様に浮き上がってるのが笑えます。
「わたし、名探偵なんかじゃありませんもの。ただの、かよわい乙女でございます」という台詞の白々しさなんか最高でございます。一体どの口がそんなことをおっしゃるのかしら?
それに、主人公の椎名梨枝をお姉さまと呼び慕うあたり、百合風味なのでしょうか。
もしかしたら祐天寺さまってば、高校時代はマリア様のお庭に集ったりしてたのでしょうか。
天使のような無垢な笑顔で背の高い門をくぐりぬけたりしてたのでしょうか。
作者の趣味ですか。そうですか。

あと、インターネットで情報集め(書評集め)する場面で、「”ミステリ系更新されてますリンク”という便利なサイトも活用」
という描写があって思わず爆笑。

*1:祐天寺美帆は『最後から二番目の真実』にて登場した奇天烈お嬢様。こっちの新シリーズで探偵役を務めることになる様子。