「方舟は冬の国へ」 西澤保彦 (カッパノベルス)

主人公は初対面の女性と少女との三人で、ある家族を装い別荘で一ヶ月暮らすという謎の仕事を受けてしまう。
邸内は監視カメラと盗聴機で見張られているとのこと。
この偽装家族生活には一体何の意味があるのだろうか? 女性や少女と家族のふりをして過ごすうちに主人公の胸のうちに芽生えた彼女たちへの情の行方は……。

「ミステリやSFの意匠を多々拝借してはいるけれど(中略)、敢えて造語的に分類するならば、ファンタジック・ロマンス」 (あとがき) とのこと。
西澤作品でいうなら『異邦人 fusion』の雰囲気に近いかな。
物語の構図はえらくストレート。西澤作品しては珍しくねじくれてなくて、ほぼ読んでいる間に予感した通りにすすんでいっちゃいました。
状況に戸惑いながらも、次第に”妻”役の女性や”娘”役の少女を愛しく思いはじめる主人公の心の動きがよかったと思うざんす。後味が良いのも○。
でも、もうちょっとレイナと主人公の絆を感じさせるような描写が欲しかったかも。



 「…どんな風に出会っても

   …いつか別れる日が来ても

    …一緒に暮らした時間があるなら

     …わたし達は、家族だもの」

         by 槙原愛「とらいあんぐるハート2」