「業多姫 壱之帖 風待月」 時海結以 (富士見ミステリー文庫)

第2回富士見ヤングミステリー大賞<準入選>受賞作。

戦国の世に翻弄されながらも強く生きようとしている姫君・鳴(なる)と、間者として闇の世界に生きてきた青年・颯音(さおと)が出会って……というお話。
わーい、面白ーい。少女漫画とかコバルトとかにありそうな戦国恋愛絵巻なんだけど、それだけじゃあない。
なんといっても業多姫(ごうたひめ)こと鳴のキャラクタが素晴らしい。
武芸の腕と異能の力をもって襲ってくる刺客をばったばったとなぎ倒し、弟のため国のため戦国の世に生まれた姫君としての生き方を真摯に見つめ、
密室殺人の謎を追い、颯音への想いを胸に秘める。すげえかっこいいじゃあないか。
相手の颯音の方はといえば、闇に生きる者の悲哀が見え隠れしているところがときめくというか、
姫君との関係が一方的にお前は俺が守るっていうのじゃないところがイイ。
状況に翻弄されつつも、それに立ち向かっていく2人の力強さが印象に残る。
富士ミス大賞の応募作ということで密室トリックなんてものもあって、そのへんはちょっと微笑ましい。
ミステリとしてはたいして評価できないけれど、わたしはこの作品好きじゃよ。

あと、表紙の颯音は詐欺だ。だって颯音はそんな伊達男な表情をするキャラじゃねー。