「カニスの血を嗣ぐ」 浅暮三文 (講談社ノベルス)

人間離れした嗅覚をもってしまった者の物語ということで、
どうしても井上夢人の名作『オルファクトグラム』と比較してしまうんだけど、
爽やかな印象を与えてくれるあちらとは全然違ってカニスの方は随分ドロドロしたお話になっております。
描写がえらく濃厚で、ねっとりと粘つくような空気に読んでて息苦しさを感じてしまうほど。
正直言って面白いとは言い難い。でも、その濃厚さがかなりの引力を生み出しているようで、ずるずるといつまでも読み続けてしまうような。
読む人を選ぶ作品だと思うけど、作品のもつ迫力は凄いです。

ファンタジーのグレさんが陽の浅暮三文なら、超感覚シリーズは陰の浅暮三文なのかも。