「天使ですよ」 遠藤淑子 (白泉社文庫)

遠藤作品の文庫化第3弾。順調に復刊されてて嬉しい限り。
コミックス版の『天使ですよ』と『兄貴』を中心に収録されているもよん。

「兄貴」この兄弟好きなんですよ。わたしにも出来のいい弟がいて、しかもわたし自身が兄の威厳もへったくれもないちゃらんぽらんな人間だったりするので、
なんとなく弟に気がねしてしまう兄の心境やらちょっとでも頼りになるところを見せたいなあという思いなんかが、他人事のようには全然思えなくて。

「一生の不覚」表向き女の子として育ってきた男の子という設定だけでわたしの琴線にばんばんふれまくり(笑)で、千尋君のキャラクタがまた良くてねえ。

「ラッコはじめました」いくつかある遠藤さんの動物モノ作品群の中で最も印象に残っているのがこれだったりする。
説教くさくならずに人間のエゴをやんわりと描いた傑作。

「憂鬱な王様」まさにこれぞ遠藤淑子!なコメディ。ラストの台詞も含めて大好き。

「パラダイス」うわーい、少女マンガーな逸品。高里椎奈がいつかこういうのを書いてくれないかなあと期待していたりする。

「君の為にクリスマスソングを歌おう」これは遠藤作品の中で最大の異色作で、こうもストレートに主題を打ち出してくる短編は他にないし、
救いのないラストと喪失感をともなう読後感もまったく遠藤作品らしくない。
しかし、らしくないがゆえに強烈に印象に残ってしまうのも事実で、
わたしは再読するたびに打ちのめされてしまう。5年ぶりくらいに読んだ今回もやっぱりそうでした。