石黒耀 「昼は雲の柱」 (講談社)

富士山麓で発見された遺跡。溶岩によって埋まっていたそれはかの徐福伝説にまつわるものであったのか?
…時を同じくして富士山がゆっくりと鳴動をはじめつつあった。
 デビュー作「死都日本」にて、カルデラ火山の破局噴火による未曾有の大災害を描いてみせた著者が今度は富士山噴火を描く!
…と聞いて読まずにいられようか。いやない。
ってなわけで読んだら、期待に違わぬ2006年ベスト級の面白さ!
神話世界や天孫降臨にまつわる伝承を火山信仰の観点から読み解いていく《火山神伝説》の部分は衒学趣味的な楽しさを満たしてくれるし、
今回ヒロインが高校生の女の子(わりと萌えキャラ)なこともあってか爽やか青春小説な展開もあったりするうえ、
物語後半ついに富士山が火を噴き始めてからの展開はまさに石黒耀の真骨頂、「死都日本」を読んだときのあの興奮がよみがえる。
あの雄大で美しい富士山が内に秘めた猛々しい一面。ぼくらが生きている間に実際にそれを目にすることってあるのかな…。
傑作。超面白かった。

昼は雲の柱

昼は雲の柱


感想:「死都日本」・「震災列島」