川人忠明 「ダークエルフの口づけ II」(富士見ファンタジア文庫)

伯爵妃クララ一行の別荘滞在に同行することになったベラたち。そこはアマデオの生まれ育った故郷のすぐ側でもあった…。
本当は、だれがだれを騙しているのかもわからない──混沌の国ファンドリアを舞台に、支配階級あるいは闇に生きる者たちが策謀をめぐらし暗躍するダークファンタジー
欲望と利害がぶつかりあい、深謀遠慮と力が物語を支配する。ささいな良心や正義など何の力も持たない。前作よりさらに非情で救いのない話に読んでて心しびれるるぅ〜〜。はうぅぅぅん。
ベラや”百顔の”ラミアですらも駒として動かしてしまうクララ。華やかな外面の内に秘めた底知れない闇はさすが混沌の王国の大貴族さま。
ベラとラミアの、懐に刃をしのばせながら互いを利用しあう、友好とも敵対ともつかぬ関係にもゾクゾクしちゃう。
幼なじみの少女から寄せられた想い、父のように敬い慕っていた神官、アマデオが故郷の村でつちかった大切なもの……。
ウリエラの悲痛な叫びが胸を打ち、アマデオが抱くであろう嘆きと悔恨に心震え、エビータが差し伸ばした手と純真に一筋の光を見た。
ベラ個人に執着する恐るべき存在まで登場し、某人物とアマデオって……だよね、等々、主要キャラをめぐる因縁も深まってきてますます面白い。
盛り込まれた内容に比して物語の尺が足りてなくいくつか説明調になっちゃってる小説的な弱点も散見されるんだけど、これは傑作といってもよろしかろう。
ソードワールドなんて知らんという若い世代にも超オススメ。椎名優のイラストに騙されたと思って読みねえ読みねえ。
ベラのドレス姿にはときめきました。なんでカラーイラストにしないのよう。


感想:1巻